ひきこもりの経験を通して【Vol.33】

今回のコラムでは、ひきこもり経験がある方に、当時の様子や気持ちについてお話を聴いてきましたので、ご紹介します。

〔これまでの経過〕

就職活動の失敗、心身不調が重なり、大学卒業後9年間ひきこもり。
身近な友人が心身不調をきたして心療内科に受診をしているということを知り、医療機関への受診を決意。
ひきこもり始めてから、6年9ヶ月経過後に、受診に繋がった。通院開始後、徐々に体調が回復。
主治医から、地域若者サポートステーション(以下、サポステ)のパンフレットを渡され、支援機関に繋がることを決めた。
支援機関のサポートを受けた後、現在は、支援関係の仕事をされている。

 

〔ひきこもっていた時は、どのような状況でしたか?〕

就職活動の失敗を機に、実家に戻ってきました。自分でも、「仕事をしなければ」と常に思っていましたが、なかなか一歩が踏み出せずにいました。

出られない時間が長くなればなるほど、社会に対する不安が強くなり、仕事に関する情報を遮断し、ひきこもるようになりました。知り合いに会うのも怖かったです。
「親に迷惑をかけている」という気持ちが強くありました。

 

〔その時、ご家族はどのような様子でしたか?〕

最初の頃は、親から「ハローワークに行っているの?」等と就職に関して言われていました。
年月が経っていくと、言葉では、就職のことを言われなくなってきましたが、毎週のように求人情報のチラシは、テーブルの上に置いてありました。

父親と喧嘩した際、感情的に就職のことを言われたこともありましたが、ひきこもっている期間、両親が「普通」に接してくれて、家庭の中に自分の居場所があったことがありがたかったです。
安心感がありました。

 

〔一歩踏み出そうとされた時の心境は?〕

主治医から、サポステのパンフレットを渡されたことがきっかけでしたが、社会に対する不安があり、最初は相談に行くのもためらっていました。支援機関に繋がる時は、とても緊張しましたし、怖かったです。
でも、「今が、踏み出す勇気を発揮する時だ」と思い、行動に移しました。

実際に支援機関に繋がってみると、優しく、自分の悩みを親身になって聴いてくれました。味方はたくさんいるんだと思い、安心しました。
社会経験がなくても相談でき、支援してもらえる機関は、自分にとって大切な存在でした。

 

〔医療機関への受診や、支援機関に繋がった際、ご家族は何か反応をされましたか?〕

通院や支援機関を利用する時は、母親に相談しました。自分のペースで活動することを受け入れてくれました。

また、「支援機関に繋がっても、いつ就職できるかわからない」と相談した時も、焦らせることはなく、見守ってくれていました。


〔ご家族の関わりもあり、一歩ずつ着実に歩みを進められてきたのだろうと思いました。ご家族は、どこか相談機関に繋がっていたり、関わり方を学ばれたりしたことはあったのでしょうか?〕

家族は、相談機関に繋がっておらず、自分が全て動きました。

自分が働き始めてから、母親に、「もしずっとひきこもっていたらどうしていた?」と聞いたところ、「いつかは誰かに、どこかに相談したと思う」と言っていました。

 

〔これまでの経験があるからこそ、今の活躍に繋がっていらっしゃるのだと思います。ご自身の経験を振り返って、ひきこもりの期間は、どのような言葉で表現できるでしょうか?〕

ひきこもっていた時は、動くことができませんでした。
でも、「あきらめずにいればいつかは動けるようになる。応援してくれる人・仲間に出会える」と信じていました。たくさんのご縁に恵まれ、今の活動に繋がりました。

自分にとって、ひきこもりの期間は、決して無駄な時間ではなかったと思っています。

 

〔最後に、このコラムを読まれている皆さまへメッセージをお願いします。〕

まずは、「辛いのは、自分だけではない」ということを知ってほしいです。
自分も、動けるようになるまで、時間はかかりましたし、ひきこもっていた期間は、本当に辛かったです。

でも、どこかのタイミングでは、一歩踏み出す勇気も必要。
そんな時に、サポートしてくれる支援機関があるということを、知っておいてもらえたらと思います。

「諦めなくて良かった」と、心から思っています。

〔ありがとうございました!〕

 

ご本人にはいろいろな思いがあり、ご家族にとっても、今の状況が辛いと感じられているかもしれません。
ですが、まずは家族が元気でいること、家庭の中で安心を感じられる環境であることが、ご本人の回復のためには大切なことだと、お話を伺って改めて思いました。

そして、ご家族自身の心身の健康を守るためにも、悩みを一人で抱え込まず、支援機関へ気軽に相談してほしいと思います。

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