ひきこもり=自分を守る行動【Vol.31】

人間には、危険を回避する力があります。

例えば、皆さんも、電車の来る警告音の鳴っている踏切には入らない、万が一通行中に遮断機が下りてきたら急いで線路内から出るなど、日々、自分の心身を守るための行動をとられていることと思います。

もし、その危険や恐怖の対象が、社会や他人だとしたら、その危険を回避するために、社会や他人に近づかなくなることは当然の行動です。

私たちが「ひきこもり」と呼ぶ状況は、こうした自分を守るための行動とは考えられないでしょうか。

 

当センターでは、ひきこもり状態を、「本人が、自分の心や体を守るために必要な行動」だと捉えています。

○何らかの事情で、本人にとって家の外に出ることは、自分の心や体が傷ついてしまうことなんだな。

〇何か、不安や怖さがあるんだな。その不安や怖さを和らげるために自分たちができることは何かな。

〇近くで支えてくれているご家族が、負担を背負いすぎずにできることは何かな。

このように思い、相談に来てくださった方と共に、何ができるかを考えています。

 

イソップ物語に「北風と太陽」というお話があります。

無理やりコートを脱がそうと、北風が強い風を吹き付けると、コートを脱がず。

逆に暖かくすると、自然と本人がコートを脱ぐ。

 

ひきこもりの方は、自分を守るコートを着ている状態。
それを周囲が無理やり脱がすのではなくて、どうしたら自分から脱ぎたくなるか等と想像しながらかかわることが大切かと思います。

本人を変えようとするのではなく、周りの環境を整えることで、その方が、安心感が得られたり、安全が確保されていることが体感できると、自然と社会や他人との繋がりを求めるようになるかもしれません。

 

ひきこもりという状態そのものに問題がある場合は、そう多くありません。

ひきこもり状態が長期化することで派生して起こる生活困窮や心身の不調等といった問題が生じてくることで、ご家族としても、『なんとかしないといけない』と思われることが多いのだろうと思います。

ひきこもり状態によって起こる問題や不安なことについては、その困り感に応じて適切な支援機関の相談につながることをお勧めしています。

 

・ 困り感が明確だが、どこに相談すればよいか分からない…

・ 困り感や不安はあるが、何に対して困っているのかがわからない…

そのような場合は、一度当センターへご相談いただければと思います。